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フィアットのセルジオ・マルキオンCEOが、フィアットの国内生産拠点の一部閉鎖を示唆し、波紋を広げている。

これは20日、マルキオンネ氏が自動車需要の急激な減少を背景に、「(イタリア国内の)すべての工場を維持してゆけるとは考えられない」と発言したもの。さらに「イタリアには現在、6つの工場があるが、それらの合計生産量はブラジル工場1か所と同じである」として、国内拠点の生産性の低さを強調した。

同時に、イタリア政府の支援次第では再検討の余地もあることも匂わせたが、ミラノ証券取引所におけるフィアット株は週末に5.7%下落した。

これまでのマルキオンネ氏は、国内全生産拠点の維持をたびたび強調してきた。8月に旧カロッツェリア・ベルトーネ工場の取得を発表した際も、同様に拠点維持を繰り返していた。今回の発言は、従来の発言を覆すものだけに、大きな波紋を呼んでいる。

工場閉鎖の最優先候補は、現在ランチア『イプシロン』を生産しているシチリア島パレルモ郊外のテルミニ・イメレーゼ工場と、『MiTo』を除くアルファロメオ全車を生産しているポミリアーノ工場と予想される。

これに対して、イタリアのスカイオーラ経済開発大臣は25日、国としても過去に巨額投資を行なったテルミニ・イメレーゼ工場について、「息の音を止めるとは、とんでもない」と発言。フィアットに再検討を促した。

スカイオーラ大臣の動揺の背景には、マルキオンネ発言の僅か1日前に、「フィアットがテルミニ・イメレーゼ工場を閉鎖することはない」と自ら発言したこともある。スカイオーラ大臣は、11月30日にテルミニ・イメレーゼ工場の従業員代表と、12月1日にはマルキオンネCEOと、工場閉鎖問題に関して意見を交換する予定。

テルミニ・イメレーゼ工場は、シチリア経済振興とマフィアと無縁の雇用創出を目指したイタリア政府の肝入りで1970年に稼動開始した。ただし、連絡橋もない遠隔地によるコスト高やストライキに悩まされ、過去の経営危機の際も閉鎖対象に挙げられてきた経緯がある。2011年にランチア『イプシロン』の生産を終了したあとは、部品組立工場として存続する計画が立てられていた。

ポミリアーノ工場は、当時アルファ・ロメオを管理していた公営産業復興公社IRIが、ナポリ周辺の産業振興を目指して、小型車アルファ『スッド』の生産拠点として1970年にスタートした。

ポーランド工場のフィアット『500』と『パンダ』、セルヴィア工場の『プント』に代表されるように、近年のフィアットは、労働コストが安くストライキに影響されない国外工場で、主力車種の生産を次々と開始してきた。

そうした中、前述のような過去にイタリアの国策として作られた工場をどのように扱ってゆき、一筋縄にはいかないイタリアの労働組合とどう渡りあってゆくかが、フィアット再生のヒーロー・マルキオンネに託された新たな課題となった。(レスポンス)
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